自分がオーナーではないですが、これまで次の介護施設の経営に携わっており、現在進行形で経営をしています。
- 有料老人ホーム(サ高住)
- デイサービス
- 訪問介護(ヘルパー)
- グループホーム
- 小規模多機能ホーム
実際に介護施設を経営している経験から「経営の基礎知識や経営改善」について解説します。
本記事はその中でも「デイサービスの売上アップ」についてご紹介します。
- デイサービスをこれから経営したい
- デイサービスの売上が上がらずに悩んでいる
上記に該当する方にお役に立てる記事になっていますので、最後までお付き合いくださいませ。
デイサービス経営について
デイサービスの経営を安定的に行うためには「売上」と「経費」の管理が必須です。
経営指標(経営状態を数字であらわした指標)を正しく理解し、経営戦略を立てる必要があります。
「安定的な経営を行う」ということは「利益を出し続ける」ことです。
赤字の事業を続けても全く意味がありませんよね。
「利益を出す」ためにすることは、2つしかありません。
- 「売上」を上げる
- 「経費」を下げる
これはどの業界でも言えることですよね。
この大前提を踏まえて、デイサービスの「売上を上げる方法」をご紹介します。
デイサービスの主な売上は介護報酬
デイサービスは介護保険のもとで行う事業なので、厚生労働省が決定する「介護報酬」に左右されます。
この「介護報酬」は3年に1回「介護報酬改定」という大幅な見直しが行われます。
ちなみに令和3年度にこの「介護報酬改定」が行われたので、次の改定は令和6年度です。
デイサービスはこの「介護報酬改定」と意識して経営する必要があります。
介護報酬の特徴
「介護報酬」の大きな特徴は、自分で「売値」を決定することができないことです。
通常の業界では、例えば「仕入れ単価」と「経費」から「売値」を決定します。
飲食店で言えば「おにぎり1個」と「高級中華料理のフルコース」の「売値」が同じではないですよね。
当然「仕入れ単価」や「経費」が安いものは「売値」も安く設定されます。
デイサービスは極端に言うと、提供するサービスが「おにぎり1個」でも「高級中華料理のフルコース」でも、入ってくるお金は基本同じなのです。
(規模や地域によって違いはありますが、規模も地域も同じであれば、入ってくるお金は全く同じです)
介護報酬はこれから上がらない?
国の社会保障費の財政難の影響があり、令和3年度介護報酬改定では改定率+0.70%と基本報酬の引き上げはほとんどありませんでした。
まして、これから国の社会保障費が潤うことは考えにくいですよね。
残念ながら、、現在の日本の財政状況では今後「介護報酬」が大幅に上げることはほぼないと言えます。
「もらえるお金の単価」が上がらないのであれば、次の施策を考えるしかありません。
- 稼働率のアップ
- 利用者一人当の単価を上げる
ではデイサービスの売上アップのために「稼働率アップ」と「利用者一人当単価アップ」の方法をご紹介します。
デイサービスの稼働率アップの方法
デイサービス稼働率アップのカギはケアマネージャー
利用者である高齢者が「私、このデイサービスに行きたい!」と言ってもらうことが大前提です。
基本ケアマネは利用者の意向に沿って、利用するデイサービスを決定します。
ただ利用者(高齢者)から率先して、デイサービスを決定することはほとんどありません。
多くはケアマネから「あなた(利用者)はこのデイサービスが合っていると思うけどどうですか?」と利用者に打診します。
広く浅くのデイサービスが選ばれる
ではケアマネにデイサービスを気に入ってもらうためにはどうすれば良いでしょうか?
ケアマネの立場に立って考えてみましょう。
数ある中から、ケアマネが利用者に合ったデイサービスを選ぶ基準は何でしょうか?
- 要介護度を上げないためのリハビリが充実している
- 認知症が進まないように認知症予防を行ってくれる
- 介護職以外の専門スタッフ(理学療法士・作業療法士など)が身体や生活改善の計画を立ててくれる
- 絵や習字、カラオケなどの趣味が思いっきり楽しめる
- 自宅から近い
- 食事がおいしい
ではケアマネに気に入ってもらえるデイサービスとは、
例えば認知症予防など、何かに特化したデイの方がニーズがあると思われるかもしれません。
もちろん認知症の利用者に「認知症予防」に特化したデイを勧めるのは間違いではありません。
- 認知症の利用者に認知症予防に特化したデイを勧めるより、「認知症予防」プラス「本人の好きなカラオケができるデイ」の方がよくないですか?
- さらにリハビリ機器がそろっていて、認知症予防だけなく、身体のリハビリも適度にできたらよくないですか?
「ウチのデイの売りはこれです!」より「ウチのデイの売りはこれとあれとそれですよ!」の方がケアマネから選ばれるのです。
よく「稼働率アップのために他のデイと差別化が大切!」と言われます。
この差別化とは、他のデイにないものを作り出すのではなく、
これこそが他のデイとの差別化だと言えます。
営業プランを立てる
せっかくあれもこれもあるデイサービスを作ったとしても、その良さを知ってもらわなければ意味がありませんよね。
ここでデイサービスを知ってもらう営業が重要になってきます。
主なデイサービスの営業先は次の通りです。
- ケアマネジャー(居宅)
- 地域包括支援センター
- 医療機関(病院)
- 地域住民
ただ営業も闇雲に行くのではなく、戦略が必要です。
まず「営業先をピックアップ」しましょう。
そこから「営業先一覧」を管理するイメージです。
営業先 | 日付 | 担当者 | 営業内容 |
A居宅 | 12月14日 | Aケアマネ | Aケアマネ担当の〇〇さんの様子を伝え、今月の行事予定チラシを渡し、火曜と木曜に空きがあることを伝える |
A居宅 | 1月14日 | Bケアマネ | 理学療法士が入社したことを伝え、転倒予防のプログラムを個別に行うことを伝える |
エクセルで構いませんので、横軸に「営業先・日付・担当者・営業内容」を記載します。
営業は「点」ではなく「線」で行うことが大切です。
時系列で営業内容を記載して、1つの居宅に対して、どのようなアピールをしているかを整理しましょう。
ケアマネがデイサービスを探すときに、あなたのデイサービスを選んでもらえるように信頼を得られる関係を構築しましょう。
居宅や地域包括センターのケアマネと病院の相談員などへの営業のやり方は同じです。
また、地域住民への営業のやり方をご紹介します。
高齢者が集まる地域の福祉センターや役場、集会所などにチラシを置かせてもらいます。
町内会長や民生委員の方に定期的にお話しに行くのも効果的です。
地域住民の方にあなたのデイサービスの存在を知ってもらいましょう。
既存顧客の利用回数を増やす
新規で利用者を増やすことも大切ですが、既存顧客のデイ利用回数を増やすことも大切です。
新規で利用者を獲得するより、既存顧客の利用回数を増やすほうがはるかに簡単です。
新規獲得はもちろん大切ですが、労力と時間がかかることも確かです。
早く稼働率を上げるためには、既存の顧客の利用回数を増やす働きかけをしてください。
キャンセル(お休み)を防ぐ
せっかく新規顧客獲得や既存顧客の利用回数を増やしても、キャンセル(お休み)が多いと稼働率アップに繋がりません。
特に冬場は体調不良や外に出たくなくなり、キャンセルが増えます。
お休みの多い利用者には、次の方法を試してみてください
- 事前電話
→前日に「何時にお迎えに行きます」電話して「待っている」ことをアピールする。
- 振替利用
→お休みの代わりに別の日に「振替利用」をお願いする。
- 表彰
→お休みが少ない利用者をみんなの前で表彰して、休まない動機付けをする
デイサービス稼働率アップの方法は1つではない!
デイサービスの稼働率アップ方法は「新規顧客獲得」だけではないことを認識してください。
デイ立ち上げ当初であれば、新規顧客獲得に時間と労力をかけなければいけません。
しかし、ある程度顧客が増えてくれば「既存顧客の利用日増とキャンセル防止」にも力を入れてください。
デイサービスの稼働率アップの方法を1つに限定することなく、限られた時間と労力の中で、結果が出る方法を実践していきましょう。
デイサービスの利用者一人当単価アップ方法
デイサービスの稼働率を上げることと、平行して、利用者一人当の単価を上げることも考えましょう。
利用者単価を上げる具体的な方法は次の2つです。
要介護度の高い利用者を受け入れる
要介護度によって介護報酬の金額が変わってきます。
「要介護1」と「要介護5」の利用者に、同じ時間サービス提供したら「要介護5」の利用者の方が入ってくる金額が高いです。
ただこれは要介護度が高い方を受け入れる「設備」と「スタッフの技術」があるかを見極めなければなりません。
経営陣は「要介護度が高い顧客を獲得しなさい」と言ってきますが、現場が設備的にもスタッフ人員や技術的にも受けいれる体制になっていないこともよくあることです。
加算算定を行う
デイサービスには様々な加算があります。
利用者の単価アップを行う最もオーソドックスな方法は「加算算定」です。
ただ、設備や人員配置が加算算定の条件になっている場合があります。
また、加算算定の最大の難点は「書類作成など職員の手間が増える」ことです。
書類作成をきちっと行う仕組みを作っておかないと、実地指導などで指摘され、最悪の場合は「介護報酬の返還」になります。
介護報酬を返還しても、職員に「既に支払った給与を返還してくれ!」とは言えないですよね。
加算算定は利用者一人当の単価アップができますが、書類作成などが煩雑になると、介護報酬返還のリスクがあることも忘れないでくださいね。
デイサービス利用者単価アップの最大の落とし穴
- 要介護度の高い利用者の受け入れ
- 加算算定
上記の2つが単価アップの基本です。
100万円稼ぐために150万円経費をかけたら本末転倒ですよね。
「単価アップの売上」と「単価アップのための支出」を計算しなければいけません。
- 要介護度が高い方の受け入れはお断りして、人員を少なくした方が利益が残る場合もあります。
- 加算も例えば、職員が1人以上取られる「入浴加算」はなしにして、人員を少なくした方が良いかもしれません。
デイにおける利用者一人当の単価アップは売上と支出のバランスを考えて、調整することが重要です。
まとめ
デイサービスの売上アップ方法をご紹介しました。
デイサービスの売上アップのために、やるべきことは2つです。
- 稼働率を上げる
- 利用者一人当の単価を上げる
稼働率を上げるためにするべきことは3つです。
- 居宅・包括への営業プランを立て、新規顧客の獲得
- 既存顧客の利用回数を増やす
- キャンセル(お休み)を防ぐ
利用者一人当の単価アップ方法は次の2つです。
- 要介護度の高い利用者を受け入れる
- 加算算定を行う
ただ単価アップには設備投資や人員補充など「経費」がかかります。
知恵と工夫次第でデイサービスの売上はアップします。
例えば、設備が「テレビ1個あるだけ」のデイは知恵と工夫だけでは、もうどうしようもできません。
設備やコンセプトが、広く浅くでもいいので「何でも揃っているデイサービス」が選ばれます。
いくらケアマネに営業に行っても「何にもない」デイサービスでは、新規獲得はできません。
設備や人員投資として、デイサービスの売上を上げるために、次の3つは必要投資と考えてください。
- リハビリ機器の設置
- 専門職の配置
- おいしい食事
最後のまとめとすると、
必要な投資にはお金をかけた上で、本記事でご紹介した「稼働率アップ」と「利用者一人当の単価アップ」の施策を行うことを強くおすすめします!
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私も介護施設で働いていますが、どの介護施設も人材不足の状況だと思います。
これから介護施設が生き残るのは売上を上げることはもちろんですが、職員確保も重要課題です。
介護職員から選ばれる「介護施設」を作り上げることが大切です。
同業者なので、あまり言いたくないですが、、、中には職場環境があまりよくない介護施設があるのも現実です。
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